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2011年9月24日 (土)

【肥田美佐子のNYリポート】米国の「失われた10年」―中流層出身の3割が低所得層に

【肥田美佐子のNYリポート】米国の「失われた10年」―中流層出身の3割が低所得層に
* 2011年 9月 23日  17:11 JST WSJから転載原文のまま

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 9月21日、米投資家ジョージ・ソロス氏は米メディアの経済番組に出演し、米経済は「すでに二番底に陥っている」と宣言した。

 米世論調査会社ギャラップが同日発表した調査結果によれば、米国人の8割が同じように考えているという。来年も景気は上向かないと答えた人は61%に達した。失業率が9%台で高止まりするなか、さしもの楽観的な米国人の間でも悲観論が主流になっている様子が分かる。これでは、米国内総生産(GDP)の約 7割を占める個人消費に弾みがつくはずがない。

 ウォール街も、人員削減のあらしで荒れ模様だ。ニューヨーク市では、失業率が下がるどころか上がっており、8月は、前月より0.1ポイント増の8.7%となった。

 米国人が生活をダウンシフトしていることは、ニューヨークの街角からも見て取れる。マンハッタンの中心地タイムズスクエアを西に1ブロック行った角地に 99セントピザのファストフード店があるが、不況知らずの盛況ぶりだ。トッピングなしのピザでも1枚2.5ドル以上が相場のマンハッタンでは、破格の値段である。以前は、はす向かいに、間口の小さな店舗が1軒出ていただけだが、金融危機のさなかに店を拡張した。近隣の格安大型青果店には、夕方ともなると勤め帰りの男性や女性が詰めかけ、複数のレジに長蛇の列が出来る。

 店舗数を大幅に拡大する1ドル均一のチェーン店も目立つ。米ドラッグストアチェーンのなかでは高級志向で知られるCVSでも、2年ほど前から「1ドル均一コーナー」が登場した。フルーツポンチの瓶詰めからクッキーの大箱、缶詰のパスタソース、ジャンボカップ焼きそばまで、多彩な品揃えである。

 こうした流れを受け、日用品メーカー最大手の米プロクター・アンド・ギャンブルも、米世帯の4割を構成していた中流層からターゲットを拡散させる動きに出ている。レイオフや株価低迷、住宅市況の暴落で打撃を受けた中間所得層が、大手スーパーなどの割安なプライベートブランドへと傾くなか、痛みの少ない富裕層とダウンシフター組にねらいを定めた「ハイ・アンド・ロー」戦略を打ち出す企業が増えている。

 長引く不況で、貧困も拡大する一方だ。9月13日の米国勢調査局発表によれば、2010年時点で、連邦政府が定める貧困ライン(4人家族で所得が2万 2314ドル以下)以下の生活を送っていた人は約4620万人に上ったという。1959年の統計開始以来、最多である。貧困率は、09年から0.8ポイント増加し、15.1%を記録。就労年代にある18~64歳の貧困率も13.7%に上り、1966年以来の高率を記録した。ことシングルマザー世帯となると、実に4割以上が貧困のふちにある。

 連邦政府のフードスタンプ(低所得者層向けの食料配給カード)受給者も記録的な数に達している。増え続ける「パイ」をめぐり、フードスタンプを受け付け始めたコンビニエンスストアや1ドル均一店、ガソリンスタンドの売店、レストランなどの間でシェア争いが加速しているほどだ。

 非営利団体の食料配給サービスもフル稼働である。今や利用者は低所得層にとどまらず、失業した元管理職や中流層が切羽詰まってドアをたたくケースも少なくない。1日40万食をニューヨーカーに提供する「フードバンク」のウェブサイトには、3年前に定職を失い、その後、マンションも手放さざるをえなくなり、同組織に駆け込んだ45歳の女性が顔写真入りで登場する。

 「時給15~20ドルの仕事なんて、もう見つからない。7.4ドルがせいぜい。フルタイムの仕事も少ないし。ひと月1000ドル以下の収入で家賃や食費なんてまかなえない」と、女性は訴える。青空市場のパートタイム職で手にするお金は、月額800ドルだという。

 前出の国勢調査によれば、米世帯の所得も3年連続で減少を続けている。昨年の年収中央値(インフレ調整後)は、09年より2.3%減って4万9445ドル(約381万円)となり、15年前の所得水準に逆戻りした形だ。勤労世帯に限っても、2000年からの10年間で、6万1574ドルから5万5276ドルへと、年収中央値が10%以上減少した。まさに「失われた10年」である。上位5%の富裕層が、1983年から2009年の間に米国で増加した富の約 82%を占める一方、下位6割は、09年の時点で28年前の水準を下回った。

 共和党は、富裕層への増税案を打ち出したオバマ大統領に対し、「階級闘争」を仕掛けていると非難した。だが、失われた10年は、世代が進むごとに経済的な階段を駆け上がれるという米国の強みが、もはや色あせて久しいことを浮き彫りにしている。

 米非営利組織「ピュー慈善財団」が9月初めに発表した報告書「中流層からの下降移動――アメリカンドリームからの覚醒」によれば、1979年に 14~17歳だった中流層出身の3割が低所得層に落ちたという。現在、彼らは46~49歳だ。生活が苦しくなった背景には離婚など個人的理由も大きいが、取材などで知り合った長期失業中の人たちにこの年齢層が多いことも確かである。管理職として優に10万ドル以上を稼いでいたが、レイオフ後、単発の仕事や貯金の切り崩し、1ドルショップで、なんとかしのいでいる人たちだ。

 9月16日、ニューヨークのブルームバーグ市長はラジオ番組に出演し、若い世代の間で悪化する雇用状況に触れ、このままいけば、カイロやマドリッドで起こった暴動がニューヨークでも発生しかねないと語った。ワシントンへの警告である。その翌日から、ウォール街では、ソーシャルメディアを通じて集まった 1000人を超える若者がデモを行い、逮捕者も出ている。

 はたして、ホワイトハウスに中流層の悲鳴は届いているだろうか。

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肥田美佐子 (ひだ・みさこ) フリージャーナリスト

東京生まれ。『ニューズウィーク日本版』の編集などを経て、1997年渡米。ニューヨークの米系広告代理店やケーブルテレビネットワーク・制作会社などに エディター、シニアエディターとして勤務後、フリーに。2007年、国際労働機関国際研修所(ITC-ILO)の報道機関向け研修・コンペ(イタリア・ト リノ)に参加。日本の過労死問題の英文報道記事で同機関第1回メディア賞を受賞。2008年6月、ジュネーブでの授賞式、およびILO年次総会に招聘され る。2009年10月、ペンシルベニア大学ウォートン校(経営大学院)のビジネスジャーナリスト向け研修を修了。『週刊エコノミスト』 『週刊東洋経済』 『プレジデント』 『AERA』 『サンデー毎日』 『ニューズウィーク日本版』 『週刊ダイヤモンド』などに寄稿。日本語の著書(ルポ)や英文記事の執筆、経済関連書籍の翻訳も手がけるかたわら、日米での講演も行う。共訳書に『ワーキ ング・プア――アメリカの下層社会』『窒息するオフィス――仕事に強迫されるアメリカ人』など。マンハッタン在住。 http://www.misakohida.com

補足 対照的な記事 お疲れと思いますので、抜粋としました。

【肥田美佐子のNYリポート】消えゆくアメリカンドリーム―加速する“超格差”の実態

 米独立系調査報道ジャーナリスト兼作家のデービッド・デグロウ氏は、上記38.6兆ドルを所有する米富裕層が、全オフショア(租税回避地)資金のうち6.3兆ドルを占め ると、自身のオンラインリポート(8月10日付)で指摘する。つまり、米国トップ0.1%(28万人)の超富裕層が、国内外に約46兆ドル(3680兆円)の富を抱えている計算だ。(注:一人当たり131億円)

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