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2017年5月25日 (木)

正常性バイアスの罠

 正常性バイアスとは、平穏な日常が、今後も継続すると信じる気持ちのことを言います。

 平和な暮らしが、長く続いてますので、過去の経験から今後も平和が続くと信じることは、99.9%の確率で正しいことです。

 この正常性バイアスは、個々人の体験に根ざしていますので、極めて強固なものです。

 自動車を運転していても、運転者が交通事故に遭う確率は、極めて少ないものです。従って、交通事故の悲惨さを知っていても、誰もが安心して運転しています。

 崖から石が落ちてくることは、報道では知っていますが、自己の体験から極めて稀な現象であり、自分には落ちてこないと確信しています。

 東日本大震災に際しても、高さ30メートルの津波が襲ってくるとは、誰も信じられないことだったのです。そのような波は見たことも聞いたこともないものです。ですから、津波がくると警報が鳴っても、誰もがユックリ歩いて避難してました。見るまでは正常性バイアスが働いてますので行動に移せないのです。

 北朝鮮が我が国を核弾道ミサイルによる標的であると明言しても、正常性バイアスが働いてますので、どこか遠い国の話のようで「怖いわね、イヤネ」でお終いです。心の底から核攻撃されるとは信じていないのです。攻撃対象であると明言されても、マサカ原発は攻撃しないだろうと高を括ってます。これを正常性バイアスというのです。換言すると平和ボケともいいます。

 平和が長く続いてますので、戦前のような治安維持法で、物言えば唇寒しの社会には、ならないと誰もが信じています。

 おそらく、戦前の社会も平和な日常が、アカを取り締まる法律が国民にファシズムを強制する法律になり、特高、憲兵が蔓延る監視社会が到来するとは、誰も信じなかった筈です。しかし、現実には到来しました。

 ナチスドイツの国民も、いくら非合法組織に指定された過去があるとは言え、国会議事堂に放火して、電撃的に全権委任法を成立させて、ワイマール憲法を破壊するとは、誰も思わなかった筈です。しかし、現実には到来しました。

 正常性バイアスは、想定外の事態が生起する確率は極めて低いという個々人の実体験に根ざしているだけに強固なものです。

 ここに、罠があります。あり得ないムチャな法律をいくら作っても誰もが想定される事態を信じないという欠陥があります。

 個人情報保護法、特定防衛秘密保護法、集団的自衛権を可能にする防衛関連法制、共謀罪、国旗・国家法の制定、内閣法制局長官の更迭、NHK会長の任命、教科書検定の強化、採択教科書の強制、マスゴミ偏向報道の是正要求、靖国神社の参拝、偏向図書を学校図書館から駆逐、校長、学長の権限強化、国立大学を独立法人化し、非常勤、任期制教員として、身分を不安定に黙らせる、文系学部教員、学生は五月蝿いので削減、弁護士・公認会計士の増員により知的エリート層の身分の不安定化を推進、国立国会図書館法を改正などを見せられても、そんなムチャはしないと誰もが信じています。

 これは、正常性バイアスのなせる技です。平和が70年も継続してますので、正常性バイアスも強固です。やるなら今です。派手に一気呵成に憲法改正で総仕上げといきましょう。

補足

 ドイツ近現代史が専門の東大教授の石田勇治さんが朝日新聞オピニオンに投稿した記事からワイマール憲法の崩壊過程をまとめます。

 ワイマール憲法は、1919年制定時に、世界で最も民主的な憲法と言われましたが、いとも簡単にナチス独裁政権が樹立されました。学校では、この過程については、ほぼ説明がありません。

 先生は、大統領に非常時の緊急事態条項を与えたことが、後の民主主義破壊につながったと分析しています。緊急事態条項とは、「公共の安寧秩序が著しく損なわれた時、大統領は回復に必要な措置を講じるため国民の基本権を一時的に無効にできる」というものです。

 1933年1月30日、国家社会主義ドイツ労働者党(NSDAP略称ナチ党、ナチス)党首ヒトラーは。国会の過半数を持たずにヒンデンブルグ大統領により連立内閣の首相に任命されました。ミュンヘン一揆で非合法化されたナチ党党首を首相に据える当たっては、目的のためには、手段を選ばない危険な政党ではない、ムチャはしないという大統領周囲の甘い見通しがありました。

 ヒトラーは、ただちに国会を解散し総選挙を実施し、その最中に国会議事堂炎上事件(1933年2月27日)を発生させて、共産主義者による国家転覆の企てだと決めつけて、大統領ヒンデンブルグを動かして議事堂炎上令(民族と国家防衛のための緊急令、民族への裏切りと国家反逆の策謀防止のための特別緊急令)を出させ行政・警察権限を完全掌握し、言論・集会の自由を禁止し、最大のライバルである共産主義者を葬むる道をつけました。この過程は政権乗っ取りいわれてます。

 非常時として、住居の不可侵、言論の自由などの基本権を当面、無効にすると宣言し、左翼、労働組合指導者を根こそぎ拘束した。この状況下で総選挙は行われ、1933年3月5日ナチス党は288議席を獲得した。

 この議事堂炎上令(緊急令)は、ナチスドイツが崩壊するまで解除されず、独裁政治正当化の法的根拠となった。

 緊急令の下、地方政府にも介入し、中央集権国家にしてナチス一色に染めあげた。

 さらに共産党国会議員を拘束した状況を利用して、電撃的に1933年3月23日全権委任法を成立させた。ヒトラー内閣成立から全権委任法成立まで、53日間の出来事でした。オレオレ詐欺にも見られるように人を騙す時には、考える時間を与えないことが古来鉄則です。

 国家危急に際してマスゴミ、専門知を有する知識人、文化人、芸術家は、日和見であり、バスに乗り遅れるなと扇動するからタチが悪いことを胆に命じるべきです。戦後は口を拭って真反対のことを言ってとして恥じない。

 この法律は、立法権を行政府の長にも与えるものです。「国の法律は、国会によるほか、政府によっても制定されうる。」、「政府が制定した国の法律は憲法と背反しうる」と規程してます。これは、4年の時限立法という屁理屈をつけてご安心下さいと制定してます。

 ナチスドイツ下では、ホロコーストも完全に合法でした。要するにヒトラーがやろうとすることは、すべて合法です。皇帝の命令と同じです。

 ヒトラーは、国民投票も良く利用しました。国民が賛成するであろうテーマを選び、十分な情報を与えず、熱狂的な演説で扇動して投票させました。

 1933年10月24日国際連盟を勝手に脱退し、11月12日、更に2度目となる総選挙を行い、有権者の88%がナチス党支持という驚異的な結果となってます。1934年8月2日ヒンデンブルグの死去に伴い総統に就任する際にも国民投票を利用してます。

 国民投票と扇動は英国のEU離脱を見るまでもなく、密接不可分の関係にあります。

※現代民主主義国家は、ゴロツキ、狂信者、営利企業の代表者が政権につかないという前提で設計してますが、その仮定は極めて怪しいものです。

 ドイツはナチスに懲りて、戦後の憲法において緊急事態条項が欧米の要請で盛り込まれた時にも、議会の関与を強く求め、基本的人権を大幅に制限する規程もなく、政府の企てのすべてに対して国民の抵抗権が認められています。日本において緊急事態条項を盛り込む時にも参考とすべきです。また、ドイツは、国民投票制度がナチスに悪用されたことに鑑みて国民投票制度を定めていません。

 ドイツにおいては、悪いのはナチスで国民は被害者という態度を取ってません。国民もナチスに加担したという態度を取っており、現在でも折に触れて謝罪してます。現在でもナチス崇拝は、「憎悪を煽る民衆扇動罪」で刑罰を科されます。

 これに対して日本は、米国の用意した言い訳「悪いのは軍部で国民は被害者」という態度を取ってますので国民は戦争に加担したという意識はなく、専ら被害者という態度となってます。しかし、国民、朝日新聞などが軍部を熱狂的に支持した事実は覆い隠しようがありません。日本は勇敢に戦ったという面のみが強調され、加害者という面が忘れられる傾向があります。

 単に緊急事態の延長を100日毎に国会の承認の義務付けだけでは明らかに内閣の暴走を止めることはできない。

補足1

 戦前の治安維持法も制定当初は、「アカ」のみ取り締まるとしてましたが、「非常時」の下では対象は全国民となったことを忘れてはならない。非常時は政権の都合でいつでも発令できるものです。特に大本営発表の伝声管と化している現在のマスゴミでは政権による「非常時」操作は自由自在です。南海トラフ地震を奇貨としてあの手この手で非常時を煽ってますが、歯止めはシッカリ、限定的に構築することが必要です。

補足2

 いま、非常時として治安維持法を政権与党に渡せば、全国のオンブズマンはすべて「アカ」で挙げられます。議員、警察、検察、公務員を嗅ぎ回るマスゴミ、オンブズマンは一網打尽間違いなし。とても無理です。やりたい放題に税金食い散らかしです。

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